相続放棄の判断と手続き(3ヶ月以内が期限)
相続放棄を選ぶケース、3ヶ月期限と熟慮期間の伸長、家庭裁判所への申述手続き、限定承認との違い、放棄後も残る管理責任(2023年改正)まで整理します。
相続放棄は「全ての遺産を引き継がない」と家庭裁判所に申し出る手続きです。借金が多い・管理困難な不動産がある・親族関係を整理したい場合に使われます。
ただし期限が「相続を知った日から3ヶ月以内」と短く、選択を間違えると後戻りできない決定なので、慎重な判断が必要です。
相続放棄とは
家庭裁判所で「相続放棄申述」をして受理されると、その人は最初から相続人ではなかったことになります。
- プラスの遺産(預貯金・不動産)も受け取れない
- マイナスの遺産(借金・債務)も負担しない
- 遺族年金・生命保険金は対象外(受取人固有の権利)
相続放棄を選ぶケース
1. 借金が遺産より多い
住宅ローン残債・事業の借入・保証債務などが、預貯金や不動産の評価額を上回る場合。「マイナスを引き継ぎたくない」のがいちばん多い動機。
2. 管理困難な不動産しかない
地方の山林・空き家・農地など、市場価値が低く管理コストだけ発生する不動産が遺産の中心の場合。「相続して固定資産税を払い続けたくない」というケース。
3. 親族関係を断ちたい
被相続人と疎遠だった、相続人同士の関係が極めて悪い、などで関係から完全に距離を置きたい場合。
4. 他の相続人に集中させたい
例:長男に事業を継承させたいので、次男・三男は相続放棄して、長男1人にまとまるようにする。これは「事実上の単独相続」を実現する方法の1つ。
相続放棄の期限:3ヶ月
相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内が原則です。多くの場合、被相続人の死亡を知った日が起算点。
3ヶ月の延長(熟慮期間の伸長)
遺産の調査に時間がかかる場合、家庭裁判所に申し立てて熟慮期間を延長できます。期間内に「相続の承認又は放棄の期間伸長」の審判を求めると、3-6ヶ月の延長が認められることが多いです。
申述の手続き
1. 必要書類を揃える
- 相続放棄申述書(家庭裁判所のHPから様式DL)
- 被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
- 申述人(放棄する本人)の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 収入印紙800円
- 連絡用切手(数百円)
2. 家庭裁判所に提出
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出。郵送可能。
3. 照会書への回答
家庭裁判所から照会書(質問書)が届くので、放棄の理由・遺産の認識を回答して返送します。
4. 受理通知書を受領
問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これで手続き完了。
放棄の効果が及ぶ範囲
相続放棄は、その人だけに効果が及びます。例えば、子全員が相続放棄しても、親(被相続人の父母)が相続人になります。それでも放棄が続けば、兄弟姉妹に相続権が移ります。
借金から完全に逃れたい場合、相続人になる可能性のある親族全員(子・親・兄弟姉妹・甥姪)が順次放棄する必要があります。
放棄しても残る義務:管理責任
2023年4月の民法改正により、相続放棄をしても「相続人がその放棄の時に占有していた相続財産を保存する義務」が残ります(民法940条1項)。
例えば実家に住んでいた相続人が放棄しても、新しい相続人が引き継ぐまで(または相続財産清算人が選任されるまで)は、その家を最低限管理する責任があります。
限定承認との違い
相続放棄と似た制度に「限定承認」があります。
- 限定承認:相続財産の範囲内でのみ債務を負担する
- 相続放棄:全ての相続財産・債務を一切引き継がない
限定承認は相続人全員の合意が必要で、手続きが複雑(財産目録作成・公告・換価)なため、実務上はほとんど使われません。
相続放棄してはいけない行動(法定単純承認)
相続放棄を考えている場合、次の行為をすると「単純承認した」と見なされ、放棄ができなくなります。
- 遺産の使用・処分(預貯金の引き出し、家財の持ち出し・売却)
- 遺産の隠匿
- 債務の弁済(借金を一部でも払う)
「とりあえず必要な分だけ」と考えて行動すると、放棄の選択肢が消えます。判断するまで遺産には手をつけないのが鉄則。
専門家に依頼する場合
- 司法書士:書類作成代行2-5万円(認定司法書士なら家裁手続きも対応)
- 弁護士:相続放棄手続き代行5-15万円(複雑なケースに対応)
家族関係が複雑、債権者からの督促が来ている、3ヶ月期限が迫っている、などの場合は専門家依頼が安全。
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