相続登記をしないと起きる5つのリスク
10万円の過料だけじゃない、相続登記放置の本当のリスク。売却不可・担保不能・数次相続・他相続人による持分処分まで、放置の代償を整理します。
2024年4月の義務化以降、「相続登記をしないと10万円の過料」という話だけが独り歩きしていますが、実際には過料以外にも長期放置によって発生する問題がいくつもあります。順番に見ていきます。
リスク1:過料10万円(義務化の直接的影響)
相続を知った日から3年以内に相続登記の申請をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。これは行政上の罰で、刑事罰ではありません。過去の相続(2024年4月以前)についても、2027年3月31日までに登記しないと対象になります。
ただし、いきなり過料が科されるわけではなく、法務局からの催告(これまでに登記してください、という通知)が先にあります。「うっかり忘れていた」ケースで一発アウトにはなりません。
リスク2:不動産を売却できない
登記簿上の所有者が亡くなった人のままだと、買い手に名義を移すことができないので、売却そのものが成立しません。実家を売って現金化したい場合、相続登記は必須の前提作業になります。
「亡くなった人の名義のままでいいから売る」という抜け道はありません。不動産取引は登記簿の所有者を基準に動くので、登記なしでは仲介業者も買主も話を進められません。
リスク3:住宅ローンの担保にできない
相続した不動産を担保にローンを組むこともできません。登記簿の名義変更が前提なので、リフォーム資金や事業資金として活用したい場合は、まず相続登記を済ませる必要があります。
親の介護費用が必要になって実家を担保にお金を借りようとしたら、登記が亡くなった親のままで止まる──こういう「いざというときに使えない」事態は、放置の代償として現実によくあります。
リスク4:数次相続で関係者が膨大になる
相続登記を放置している間に、相続人本人が亡くなると「数次相続」が発生します。最初の相続人の相続人(子・配偶者など)が新たに相続人として加わり、世代が進むほどネズミ算式に増えていきます。
典型的なケースで、祖父名義のまま放置されていた山林を整理するのに、相続人が30人を超えていたという例も珍しくありません。全員から実印と印鑑証明書を集めなければ遺産分割協議書が作れず、1人でも非協力的な人がいると登記が止まります。
リスク5:他の相続人に勝手に処分されるリスク
相続人の1人が、他の相続人の同意を得ずに法定相続分の登記をしてしまった場合、その持分(法定相続分)を第三者に売却することが理屈の上では可能です。
実際には買い手がつくケースは限定的ですが、相続人同士の関係が悪い場合や、誰かが急にお金に困った場合などに起こり得るリスクです。「相続人全員での話し合いが終わるまで放置」が一番危ないパターンになります。
応急措置:相続人申告登記
遺産分割協議が長引いて期限内に登記できない場合、2024年4月から始まった「相続人申告登記」という救済制度を使えます。「自分は相続人です」と申告するだけで、過料の対象から外れます。手数料も無料です。
ただしこれは正式な所有権移転ではないため、不動産の売却・担保設定はできません。あくまで義務違反を回避するための応急措置で、最終的には通常の相続登記が必要になります。
期限のおさらい
- 2024年4月1日以降に発生した相続:相続を知った日から3年以内
- 過去に発生した未登記の相続:2027年3月31日まで
- 遺産分割が3年以内にまとまらない場合:相続人申告登記で延命可能
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